Making
制作, 造形
設定
『ルーガライザーJ』の企画は、2017年6月から練り始めた。当初から「若者たちの物語」にするという方向性を定めていたが、具体化するまでに様々な議論がなされた。
全体の概要を組んだのは、ゼミ生の神田君だった。彼が持ち込んだ「未来生物・守護獣」の概念、そして守護獣の力を宿すことで超人になれるというアイディアは、そのまま決定稿まで残された。未来の覇権を争う守護獣たちが、過去の時代にやってきて、現代の若者に憑依し、未来を変えるために戦い合う。こうすることで、変身できる理由と、若者たちが戦い合う物語が描けると踏んだ。
合わせて、未来イメージ+神話世界の表現として、カタカナ表記の横文字と共に漢字を多用することとなった。守護獣の使者として現代社会にタイムスリップしてくる者を「テンニン(天人)」、テンニンに力を与えられ超人化したエージェント(代理人)を、「カンナギ(神和)」とした。ただここまで作りこみながら、短いステージショーの中でこの設定を語る余地は厳しく、苦労することになる。
デザイン/名称/造形
時間的制約から、敵のキャラクター造形は2017年4月時点までにほぼ完成させ、設定が練りあがると共にヒーローのデザインが模索された。過去の石井研究室のヒーローとの差別化は至上命題であった。
「ユニベーターJ」の甲冑を思わせる青のデザインや、「リベレスパーJ」の生物感あふれる赤のデザインを踏まえ、新ヒーローはメカニカルな雰囲気を持った白のデザインで行くことに決まった。敵キャラクターのデザインに、クモ、クマ、サルといった動物モチーフが入っていたこともあり、ヒーローのモチーフにも動物が求められた。選ばれたのは猛々しくも美しい白いオオカミであり、「狼男のヒーロー」がデザインコンセプトとなった。「調和を愛する」という性格付けもあったことから、群れの仲間を大切にするオオカミのイメージは重なるものとなった。
名称はデザインの方向性が決まってから発想された。「ハーモニックJ」「キバトアギトJ」「ルーガルーJ」「ワオンガルルJ」「キバオオカミJ」などが検討されたが、「狼男」を意味するloup-garouと、「立ち上がる者」を意味するriser、そして城西大学を示す「J」を加え、「ルーガライザーJ Loup gariser J」と決まった。
一方で、ヒーローに力を貸す「テンニン」として、「ゆるキャラ」然としたかわいらしいキャラクターを出そうということになり、漢字のオオカミの字を二つ重ねて「ロウロウ(狼狼)」となった。
デザインにはゼミ生からのアイディアを得つつ、教員の石井から提案する形で固めていった。メカニカルなイメージと共に、スタイリッシュな雰囲気を出しつつ進められた。ゼミ生の渡辺君のアメコミ志向も、少なからず反映されている。また第1話から登場した刀型武器「キバ」の元デザインはゼミ生の佐藤君が挙げてきた。
白いヒーローであることが求められたが、黒地に白い装甲が覆い、アクセントで蛍光グリーンのラインが走るデザインとなった。マスクは左右非対称とし、左半面は調和のとれたデザイン、右半面は狼を表象した険しいデザインとなった。また左半面と同じデザインのパーツが右半面の獣面を覆っており、ストーリー終盤でパーツを剝ぎ取り、顔が割れて怪物化するというギミックを仕込んだ。造形しながら出て来たアイディアだったが、狼男の変身と、いわゆる「マスク割れ」をストーリーの中に盛り込む意味で効果的だと考えて取り入れた。
造形素材にはコスプレボードを中心に、100円ショップで購入した薄手のウレタン板を使用している。今回はFRP造形を行わなかった。表面には光沢のある生地を張り込み、ステレオタイプではあるが、スタイリッシュな未来の雰囲気を出すこととした。
またマスクの覗き穴は、従来は滑り止めマットを使用してきたが、今回は透かしのある薄手の光沢素材を貼り込んでみた。既に『高麗戦士トライ』のキャラクターで試行していたものだが、左半面の二重マスク構造のためかなり視界が悪くなり、夜の屋外公演となった第2話の実施前に改修し金の穴あき布を併用している。
ルーガライザーJを助けるテンニン「ロウロウ」は、ゆるキャラ然としたかわいらしいデザインを目指し、頭部は100円ショップの大型植木鉢をベースに、コスプレボードで口と耳の芯を作った。首から下はネットで購入した動物パジャマのオオカミを改造した。頭部の表面にも、この動物パジャマから切り出した立毛素材を貼っている。
またかわいらしさと共にエンジニアの雰囲気を入れたかったので、サロペットジーンズを履かせてみた。中古のジーンズとレディスのサロペットを縫い合わせてある。また試着したところ首回りが寂しかったため、マフラーを巻いてみた。第1話では紺色だったが、青のサロペットジーンズと同化してしまうため、第2話からは明るい茶色のマフラーに替えられた。