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 『レベルJ』のHPを訪問下さり、ありがとうございます。

 城西大学経営学部石井ゼミが始動してから、今年で七年目となります。ローカルヒーローの調査研究と実践活動という前代未聞のゼミ活動も、大学や地域の中で定着してきた手ごたえを得られるようになりました。中にはこのゼミに惹かれて入学してくる学生も出ており、嬉しさと共に責任が大きくなっていることもまた感じます。

 2015年に第1期生が生み出した『ユニベーターJ』から、毎年新しいヒーローシリーズを学生たちと生み出し続けて参りましたが、2019年からの1年半はコロナ禍という大きな転機を経験もしました。第6世代の『リジェネイダーJ』はまさにそうした危機のさ中にある状況を取り入れて、骨太の近未来SFを展開しました。

 そして2021年に誕生した第7世代ヒーロー『レベルJ』もまた、依然として尾を引くコロナ禍の現代社会を暗喩しています。但しそのニュアンスは昨年とは異なります。コロナ禍を経験し次の世界が見え始めた2021年には、別の視点が必要でした。本作のテーマは、「普通の日常を取り戻す」こと。ゼミ生のひとりである門君が企画会議で提案した一文です。彼らは丁度コロナ禍の前年に入学し、2年生、3年生の1年半を困難の中で過ごしてきました。そんな彼らの心情をずばり言い当てたこの文句は皆の賛同を得、本作のテーマとして繰り返し登場することとなりました。
 主人公たちの舞台は、〈大災害〉に襲われその傷が癒えていない近未来です。〈大災害〉とは、人類の生存を危うくする程の災害の数々、地震、津波、放射能汚染、温暖化、伝染病・・・こう並べると絶望的な世界であるかのように思えますが、実のところこれらは全てここ10年間の日本列島で発生し、現在も進行している災害であり、また人間の手でその規模を拡大してしまった人災の側面を持っています。主人公たちの世界は、荒唐無稽なSF世界ではなく、実は現代社会そのものです。

 そして困難の中で、皆が考えること、決断することを放棄し、誰かに決めてもらえる管理社会「パノプティ」が彼らの敵として登場します。これもまた多かれ少なかれ、世界のあちこちで生じていることと言えるでしょう。強権を発動できる管理社会は、危機的状況下ではある程度有効に機能することは認めざるを得ないでしょうし、自分で悩み考えることの大変さから逃れたい者には、楽園に映るかもしれません。
 しかし主人公たちはこの世界に抗います。企画会議ではもう一つ、「正義のヒーローに見える悪役」というコンセプトも上がりました。同時にこれは、「悪役に見える主人公」を設定することも意味しました。ゼミ生の神田君のアイディアを基に、主人公であるアルハーゴとワゲードは、それぞれガンマンとヤンキーというおよそ王道ヒーローとは言えないモチーフのキャラクターになりました。そして彼らは、自分のことを自分で決める道を選んだことで、作中では社会の敵として描かれます。

 一方、彼らの前に立ちふさがる敵たちは「正義のヒーロー」として登場します。彼らもまた、主人公たちとは異なる理念と正義を持っています。人類生存のため、彼らは自分の正義を疑わず、誇りを持って戦いを挑んできます。結果として、本作にはいわゆる「怪人」や「悪役」は存在せず、「主人公と敵対するヒーロー」と位置付けられることになりました。

 ヒーローたちが信念の基にぶつかり合う『レベルJ』。今後の展開に是非ご期待下さい。


2021年11月21日
石井龍太(城西大学経営学部准教授)

 ご挨拶 

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