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ご挨拶

 『リジェネイダーJ』のHPを訪問下さり、ありがとうございます。

 

 2015年からスタートした石井ゼミナールの活動も6年目となり、昨年とほぼ同数の12名の学生を新たにゼミナールに迎えることが出来ました。彼らには例年通り、地域キャラクターの調査とイベントの経験を積んでもらい、秋には新ヒーローの誕生、と進みたかったところですが、しかし新型コロナウィルス感染症の拡大はそれを許しませんでした。大学は閉鎖状態となり、2020年度前期の講義はオンライン化を余儀なくされ、実技そのものと言ってよい石井ゼミの活動は強く制約されることになってしまいました。さらに地域の祭事は軒並み中止となり、例年ステージショーを上演していた石井ゼミは、教育の基盤となる地域活動の場を失うことになってしまいました。

 こうした先の見えない状況下で、石井ゼミ第6世代ヒーロー『リジェネイダーJ』の企画は進められることとなります。いつ世に出せるのか全く分からない中で、学生たちはオンライン会議を繰り返し、実に様々なアイディアを出してくれました。そして現実問題、時事問題に積極的なローカルヒーローの在り方を意識し、新ヒーローもまた過去の石井ゼミのヒーローと同じく、学生として、若者として見た現下の社会問題をテーマとして取り入れていくことになります。

 最初に挙がってきた学生たちのアイディアに、差別問題がありました。会議を重ねていた頃にはアメリカで社会の分断が進むなど、学生たちにとってよく耳にする話題だったと思います。そしてコロナ禍の中で、差別問題は更に助長されてきたきらいがあります。新型コロナウィルスを巡る問題は、ウィルスそのものの感染力や引き起こす症状にとどまらず、人間社会が様々な方向に問題を発展させてしまう人災の側面も少なくなかったように思います。特に外国人、医療従事者、罹患者に対する差別問題は今も耳目を賑わせています。さらにマスクに始まる無秩序な買占め問題や、フェイクニュースの拡散問題など、感染症拡大への不安が引き金となったエゴの表出、混乱が多くあった様に思います。

 新ヒーローの企画会議を行っていた春から夏にかけての時期は、世界全体がこうした混乱の中にありました。その意味では、石井ゼミが題材にすべき話題は、残念ながら山ほどあったと言っていいでしょう。そして2020年に生み出されるヒーローは、新型コロナウィルス感染症の拡大と、それに伴う社会の混乱を無視する訳には行きませんでした。

 『リジェネイダーJ』は近未来を舞台に据えたハードSFの世界観で展開しますが、そこで描かれる内容はまるでSF世界のように展開する現代世界を暗喩したものです。登場するキャラクターたちは、己の信念に従って困難な世界を変える戦いに挑んでいきます。

 そして勝負時になると、彼らはその口にマスクを装着します。2020年を代表するアイテムは、不幸にしてというべきか、マスクだったというべきでしょう。一方で、息苦しいマスクを常時していなければならないという現代社会の風潮は文字通り息苦しいものというべきでしょうし、マスクをしていない、出来ない人への差別意識をもまた生み出しました。『リジェネイダーJ』のキャラクターたちが装着するマスクは、彼らを戦闘モードに仕上げると共に、彼らの心を蝕み、凶暴化させてしまう副作用を及ぼすという設定を盛り込んであります。これはマスクに対するある種ゆがんだ精神状態を暗喩しています。

 SF世界で描かれていたような現実離れした事柄が次々起きる世界に、唐突に我々は生きることになってしまいました。そうした中で生まれた『リジェネイダーJ』の物語は、重厚な、しかし若者たちの生きる活力と、明日への希望を持ったものになっていくことでしょう。これからの活動を是非応援下さい。

​2020年12月12日 石井龍太(城西大学経営学部准教授)

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