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メイキング

設定「ユニベーターJ」の企画は、ゼミ生達が入ゼミ課題として提出した新ヒーローの企画レポートから始まった。集まったレポートを基にして、企画会議は7月から始まり、時には日が落ちるまで続けられた。ゼミ教員の石井は特にオリジナリティを重視し、過去にないヒーロー企画が模索された。

 

大学のローカルヒーローであるからには、やはりヒーローは大学生であろう。しかし学生は非力だ。ヒーローと一番遠い存在かもしれない。では学生をヒーローにするにはどうするか?改造される?ベルトを拾う?強化スーツを貰う?遺跡を見つける?・・・よくある、聞いたことある設定ばかりだ。それにいきなり巨大な力を手にする様な、偶然めいた展開は何とかならないか?ヤクザが落とした拳銃拾って、面白半分に乱射しているみたいじゃないか?

 

会議の果てに出て来た設定が、未熟な学生ヒーローと、学生に力を与える戦えないヒーローの二人組だった。ヒーローになる力は、もう一人のヒーローが認めなければ手に入らない。それは若者の可能性への手助けだ。全体を貫くテーマは「ヒーローの成長」とも考えられたが、人間そう簡単に成長できるか?ステージショーで描けるか?そこで「成長」は「気付き」となった。戦いを通じて、未熟な若者が気付いていく物語だ。次は名前だ。"イノベーターInnovator"。経営学部で作られるローカルヒーローなのだから、経営学で使われる用語であるイノベーションを捩った「革新を起こす者」という意味だ。そして大学Universityと城西大学のイニシャルを合わせて、ヒーローの名前は「ユニベーターJ」、Jに力を与えるもう一人のヒーローは「ユニ」と決まった。

 

同時に検討されたのが、敵の設定だった。単なる悪ではない、新しい敵の設定が欲しい。若者の敵、学生の敵、成長の敵・・・未熟な若者の反対側にあるならば、諦め妥協した、しかし成熟した存在であろう。そして学生が個人なら、個人の敵として現れる大組織であろう。現代社会に大きな影響を及ぼしてきた大組織、世界を管理し安定と秩序を守ることを目的としているが、全体のために個人を犠牲にし、妥協を強いてきた者たちだ。大組織なら、構成員はバラエティ豊かになるだろうから、色々な物語が作れそうだ。名称は、諦めreginateを捩って「レジネーター」と決まった。

デザインユニベーターJをはじめとするキャラクターデザインは、主に副ゼミ長の加治君がイラスト化し、ゼミ生全体で議論しながら決めていった。ただ時間の制約があったため、既にゼミ教員の石井が製作していたオリジナルキャラクターをレジネーターの大幹部として用い、J、ユニ、レジネーターの幹部と怪人の新規製作が行われた。

ユニベーターJのデザインには、大学生、城西大学といった要素を具現化したアイディアが求められた。会議で出て来たアイディアは「風」だった。その意匠は左胸に込められている。そして城西大学のエンブレムカラーである青色と黄色を基本として、デザインが決められていった。

ユニのデザインは難航したが、名前にちなんでユニコーンの意匠が取り入れられた。色はJと同じ青色と黄色。そして飄々とした風来坊をイメージし、大きな帽子を思わせる頭部デザインとなった。体はシンプルにマントと首飾りのみとし、全体に高貴な雰囲気となった。

レジネーターの怪人には、既に学生が怪人となった「タンイヤベーナ」のアイディアがゼミ長の石井君から出されていた。タンイヤベーナのモチーフには蜘蛛が選ばれた。「1号怪人は蜘蛛にしたい」というデザイン担当の加治君の主張が容れられた。第一話のシナリオを踏まえて、最終的に3体が少しずつデザインを変えて作られた。

1号怪人が蜘蛛ならば、2号怪人は蝙蝠となった。またユニと同じく他者に力を与えるという設定に応えるため魔術師の意匠も取り入れられ、幹部怪人として仕上げられた。名称は「バッドバット」。少々安直だが、蝙蝠が羽ばたく擬音の様な語感である。

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