top of page

部長の休日

(作:前澤隼英)

DSCN0246.jpg

ヒーローたちが挑むべき敵。総合商社セル。悪の秘密結社を前身とする企業である。
業務内容は世界征服。そして業務形態は、ブラックの極みである。サービス残業は、当たり前。研修は厳しく、正社員は精神論ばかり。
そんなブラック企業の一員である、資産管理部の部長ニャロース。今回は、最近、出勤続きで、お疲れ気味の彼の休日に迫った物語である……

まぶしい太陽の光が窓に差し込んでくる。背伸びし、軽くストレッチをしながらぼやいた。 「最高の日和だ。」
今日は久しい休日、リヴァイザーj達の戦いの疲れを癒やすには、ぴったりな日だ。
「さて、まずは朝食をとろうとしよう。」
ストレッチを終わらせて、キッチンに向かった。材料と調理器具の準備し、慣れた手つきで料理をし始めた。朝食作ることストレッチは、毎朝のルーティンであり、たとえ会社に遅刻しそうな日でもこれだけは欠かせない。遅刻した日は、大体遅延証明を偽造してごまかしている。
「卵が残っていたな、使ってしまうか」
そう思い、冷蔵庫から卵取り出し、キッチンの角で卵をたたき片手で器用に割っていた。
卵をボウルの中で溶きながら、茶色い粉末をいれていた。そう砕いたマタタビである。
ニャロースは、かなりのマタタビ中毒者であり、何にでもマタタビをかけてしまうマタタビラーであった。
「この匂いが…あぁぁぁぁ」
もうすでに軽く酔っていた。しかし、料理慣れしているその腕前見事なものであり、よっていながらも、黄色く、マタタビの芳醇な香りが漂うふわふわなオムレツを焼いていた。
「さて…」
焼いたオムレツを皿に盛り付け、ケチャップで何かを描き始める。
サメのような頭に鋭い眼光、二つのヒレ。あの宿敵であるリヴァイザーjを描いていた。
「我ながらいい腕前だ。」
ケチャップアートを描き終え、自分の腕前に一通り満足した。仕上げも完璧、いざ実食しようとフォークを持った…次の瞬間!
「うぅぅばっしゃっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
奇声をを発しながら、フォークでリヴァイザーjの描かれたオムレツを形が崩れるまでメッタ刺しにしている。
「○ねぇぇぇリヴァイザーーーーーー」
これが彼なりの休日のストレス発散方法であり、日頃の仕事でたまった疲れと戦いの屈辱をここでぶつけて、心をスッキリさせるのである。
しかし、こんな品のない姿弟のニャンビーにでも見られたら、兄としての尊厳を失い、会社に知れ渡り、彼の居場所がなくなるであろう。
「…食べるか。」
そうつぶやき、ぐちゃぐちゃになったオムレツを食べ始める。
こうして彼の休日はスタートする。


時刻は午後2:30
朝食を食べ終え爪とぎをした後、日向に当たりながらうっかり惰眠を謳歌してしまった。
「おっと、もうこんな時間かそろそろあれの時間だな…」
あれの時間とは、ニャロース部長の休日のルーティンであるアフタヌーンティーの時間だ。彼曰く、これをする事によって仕事に身が入りリヴァイザーjとの戦いに備えているらしい。
惰眠で重たくなった体を起き上がらせ、戸棚に向かい扉を開ける。
茶葉を取り出し、上機嫌でキッチンに向かう。ヤカンに水を入れて、火にかけた。
沸騰する間に冷蔵庫の中や戸棚を調べ、今日の気分に合う茶菓子を探し始める。
「今日は気分がいい、最高にいい物を食べたいものだ。」
そう思い、先日お気に入りの店で買ったスコーンを用意した。
お湯も沸かし終えたので、あらかじめ温めていたティーポッドに茶葉とお湯を入れて蓋をし、少しの間しっかりと茶葉蒸らしていく。
「久しぶりにニャロースでも招待してやるか。」
思い立ったらすぐ行動。早速電話で呼び出してみる。
プルルルルー ガチャッ
「もしもし、兄さんどうしたの?」
ワンコールで出た。ニャロースは必ずと言っていいほど、ワンコールで電話に出る。兄の呼びかけにすぐ答えることはいいことだが、少しばかり恐怖を感じる。そんなことを思いつつ、気を取り直し電話に出る。
「あぁ私だが、久しぶりにお前とアフタヌーンティーを楽しみたいと思ってな。良かったら一緒にどうだ?」
「いいのかい兄さん、すぐいくよ!」
「あぁ、じゃあ私の家に来てくれ」
会話を終え、電話を切るとちょうど茶葉の蒸らし終わっていた。
ポットの中をスプーンでかき混ぜてから茶こしで、こしながらお茶の濃さが均一になるようにカップに注ぎ分ける。準備は整った後は、粉末のマタタビを紅茶に降り注ぐだけだが、
しかし、問題が発生!マタタビのストックがない!そう朝食のオムレツに全部使ったのである。
「私としとことが…仕方ない買ってくるか」
しぶしぶ思いながら、ニャロースに置き手紙を書き机の上に置いておく、出かける準備を進めていると携帯が鳴り出した。ニャンビーからだろうか?そう思い携帯を手に取る。すると画面には「社長」の二文字があった。おそらく緊急の仕事を押し付けるために連絡したのであろう。
「社長とはいえ私の少ない休日を邪魔するとは許せん!ここは……無視だな後で会社にいけない理由を考えておこう。」
気を取り直しめんどくさがりながら、出掛ける準備が整ってた。
「あぁ~めんどくさー」
買い物と会社への不満をぼやきながら、ドアノブに手をかけ外へ踏み出す。災難への一歩とは知らず。


「兄さん来たよ。」
兄にアフタヌーンティーの誘いをうけ訪問したニャロース。しかし、インターホンを鳴らしても、ノックをしても返事がない。念のため何度か携帯にかけてみたが一切電話に出る気配がない。
「さて、どうしようか…」
途方に暮れながらドアノブに手をかけた
ガチャッ 鍵が開いていたのだ。そのままドアを引き部屋の中に入る。
「兄さんはいるよー」
呼びかけてみたがやっぱり返事がない。そのままリビングへ進むとテーブルの上に一通の手紙があった。
『ニャンビーへ
すまないが、マタタビがなくなってしまったので買い物に出かけてくる。お詫びと言っては何だが、いい茶菓子を買ってくるから待っていてくれ。byニャロース』
兄さん…携帯に連絡してくれよと思いつつ。兄の部屋で待つことにした。
しかし、ただ待つだけでは、つまらないと思うニャンビーは部屋の捜索をし始めた。
いつも優秀で完璧な兄、実力でセルの資産管理部にまで成り上がり一目置かれている。いつかは、あの兄を超えるため弱点を今のうちに見つけ兄より上の地位に立とうと考えていた。
「さて何かないかな~」
まずは、ベットの下を探し始めた。ベットの下といえば男の宝が眠っている定番の場所である。アレなものがもしも出てきたらセルの社員たちにばらまき自分の信用度を上げ、兄を辱めてやろうとせこい考えが思いつく。ベットの下に手を伸ばしガサゴソとあさってみる。
ビンゴ! 薄い本のようなものが手にあたった。これはきっとアレなものに違いないと確信しながら薄い本を引き釣りだす。
「…なにこれ?」
思わずキョトンとしてしまった。薄い本には違いなかったが、表紙には、おじさんとおじさんの肩にのった猫が乗っていた。タイトルは『世界ネコ歩き』
もしかしたらカバーはダミーかもしれないと思いざっと中身を確認してみる。
だが、どのページも可愛らしい猫とたまにおじさんが載っていた。ニャンビーは困惑した。
兄は、これを性的な目でみているのか、それとも癒し目的にみているのか。いくら猫怪人でももとは人間いくらなんでも猫に欲情するのかとそもそもなんでベットの下に猫の写真集を隠すのかばれたら恥ずかしいものなのか?いろいろと考えを巡らせたが考えるがめんどくさいし、弱点にならなそうなのでそっと元の場所に戻しておく。その後も探索を続けるも弱点らしきモノは見つからないため断念した。
「兄さん早く戻ってこないかな。」
不満そうにつぶやき、テーブルに置いてあった冷めた紅茶をすすった。


ニャロースは近くのデパートに来ていた。
「まずは、粉末タイプのマタタビだ。急がなければ」
真っ先に向かったのは、デパート1階にあるペットショップ。猫怪人がペットショップで買い物をするなど皮肉であるがマタタビはペットショップぐらいでしか売られてないので、致し方ないのである。ペットショップについた途端すぐさま猫用品コーナーをみつけ、お気に入りのマタタビを棚にあった分だけでカゴに入れた。そそくさとレジへ向かい会計をすまして店からさっさと出ようとしたが、何者かの視線を感じた。
侮蔑や、殺気のようなものではなく、誰かが訴えかけるような視線だった。
視線を感じた方向を振り返ると、子猫が展示されているガラス張りのケースからのもので、その中の1匹である茶色くて毛の長くもふもふしてそうで、耳がくるっと折れ曲がったキュートなスコティッシュホールドが
こちらをじっと見ていたのだ。まるで、僕と遊んでかなくていいのと?言われているみたいに。
ニャロースは自然と足がふらふらとその方向へ運んでいた。ガラス張りのケースを食い気味にみながらスコティッシュホールドを眺めていた。
自分の心が癒やされていくのがわかる。このままずっと眺めていたい。そう思うほどその猫に心が奪われていくのがわかった、このまま持ち帰ってしまおうと思うくらいに。
「…まだ、ニャンビーは来ないだろう」
自分が満足するまでスコティッシュホールドを眺めることにしたニャロースだった。


しまった、さすがに眺め過ぎてしまった。なんやかんやで30分くらい眺めてしまい途中から店員に「抱っこしてみますか?」とにこやかに対応されつい抱っこしてしまった。そのまま流れに身を任せていたら店員のマシンガントークが始まり、抜け出せない状況になっていた。
「さすがに時間を食いすぎてしまったな、今度こそさっさと買い物をおわらせなければ。」
ペットショップを後にし、デパート地下一階に向かう。デパ地下はすばらしい。食品、日用品なんでもそろっていながらも専門店で出されているグルメがとても美味である。文句のつけようがない場所だ。「さて…茶菓子をかうとしよう。」気を取り直し、足早にいつも茶菓子を買っているお店『ニャトレーゼ』に向かう。ニャトレーゼはお財布に優しいながらも高級スイーツに引きをとらないクオリティであり、ニャロースお気に入りのお店である。何を買おうか頭を悩ませながら移動してると、ニャトレーゼの前に見慣れた青く、鋭いヒレを持ったサメ頭と茶色くぴんっと立っている犬耳がガラスケースの前で会話している特徴的な視界に入った。まさかと思い目をこしらえて、よく見てみる。間違いないリヴァイザーJとディクテイザーJだ。見つかったら間違えなく面倒なこと巻き込まれるとニャロースの勘が囁いている。なぜ休みの日に限ってこんな不運が続くのか、なんて日だ!!と叫びたくなったが、ぐっとこらえ、リヴァイザーJがこんなところで何をしているのか様子を見てみる。

「う~んどれにするかな」
「リヴァイザーJまだ悩んでいるのか、結構長い時間悩んでいるようだが、自分で食べるやつだったら、自分の好きなやつを選べじゃいいじゃないか」
「いやー、俺のじゃなくてさ、今度さ、エキュラーターのやつが出世するらしくてよ、出世祝いでケーキでも買ってやろうかと思ってさ。どれがいいかと迷ちまってさ。」
「リヴァイザー…そういうことなら私も一緒に選ぶとしよう。」
「おう、サンキューな!」

さすがヒーローかつての仲間の出世祝いとはずいぶんと仲間思いなことだ。しばらくしたらケーキをかって立ち去るだろう。そう思いニャロースは、その場を後にし、暇つぶしにほかの店を散策するのであった。


三十分後
あれからデパ地下を歩き回り、焼き魚の香ばしい匂い誘惑されつい買ってしまったり、新しい紅茶の葉を見つけたりといろいろあったが、ニャトレーゼの近くまで戻ってきた。さすがにもういないだろうと思いその場で様子を見てみる。しかし、リヴァイザーJたちはまだどのケーキにするか迷っていたのである。
「うーんどれにするかなー」
「リヴァイザーJ、プリンやシュークリームという選択もあるぞ」
「おっ、そいつもいいな」

(あいつらケーキ一個買うのにどれだけ時間をかけているんだ。そんなの適当でいいだろ!)と心の中でニャロースは叫んだ。速く家に帰ってアフタヌーンティーを楽しみたいという気持ちがイライラを募らせていく。なら茶菓子を食べないと言う選択肢もあるが、答えはNOだ。茶菓子絶対に欠かせない。イライラが加速ニャロースだがリヴァイザーj達はガラスケースの前で会話は一歩も進んでない。
「うーん、やっぱ無難にショートケーキか?」
「いや、フルーツがたくさんのっている方が、エキュラーターも喜ぶんじゃないか?」
そんな変わらないリヴァイザーj達のやりとりにニャロースのイライラが頂点に達し、ついに理性という紐がプツンときれてしまった!
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
声を荒げながらゴールデンキャットクローで襲いかかる、しかし、それに気付いたリヴァイザーJ紙一重でなんとかかわした。
「いきなり襲いかかってくるなんて非常識じゃねえか!!誰なんだてめぇは…って猫の巣ニャロースじゃねえか!!なんでお前がこんなところに!」
「それはこっちのセリフだリヴァイザーJ、ケーキを選ぶのにいったいどれだけ時間を掛けているんだ!店員やほかの客に迷惑だと思わないのか!!」
勢い余って怪人らしくないことを言ってしまったが事実だから致し方ないだろ。と自分に言い訳をした。
「うるせぇ別にいいだろうそんぐらい!ケーキぐらいゆっくり選ばせやがれ!それよりも今ここでお前をぶっ倒す!!」
「私も同意見だリヴァイザーJ一緒に戦おう」
「ほう…いいだろうだがここで戦うにはいささか狭すぎる、いい場所を知っている…ついてこい」
(しまったーやってしまったー面倒なことなったー)
自分のとった愚かすぎる行動を心の中酷く後悔する。急いでいた故に先走ってしまった行動である。ただでさえ猫背なのに落ち込んでさらに背中丸くなる。その姿はリヴァイザーJ達には哀愁を感じたとか感じて無かったとか…


セル本社にて
日曜だというのに今日の元気に?派遣社員である人事課戦闘員の平岡と松尾が働いている。
「あ~あせっかくの日曜日なのになんで仕事してるんだよ~」
平岡が愚痴をこぼし始めた。彼はついこの間猫の巣の係長ニャストにすっぱりと切られて大量出血で一度死んだが、セルによる蘇生強化手術により平岡マークⅡとして蘇ったのだ。生き返らせてくれたことには、会社対して恩は感じているがそれとこれとは話が別である。
まあ、殺したの会社の人間なんだけどね。
「しょうがないだろ、俺たちここ以外で働けないし、失敗しまくって立場がおどされてるんだから。それに会社も本気でヒーロー潰しにかかるらしくていろいろと忙しいらしいぜ」
「マジかよ、だからって休日出勤させる理由にはならんだろー、あっ、そういえば高山は?あいつも今日仕事あったよな?」
「あぁ、あいつなら平蛾博士の実験の付き合いだって、100%の力引き出せるとかなんとか言ってた。」
「ふ~んあいつもあいつで大変なんだな。それにしても早く家に帰りてぇなー」
たわいのない雑談をしていると平蛾博士が急いだ様子でやってきた。
「おい、お前達緊急の仕事だ。資産管理部のニャロース部長をここに連れてくるのだ!」
「ニャロース部長がどうかしたんですか?」
「社長直々に電話があってだな、ニャロース部長に新怪人のデータチェックを任せようとしたのだが連絡がとれないらしい、かなりお怒りの様子だ。」
まぁ、休日に会社から電話かかってきたらバックれたくなるよねと心から同情する人事課戦闘員達
「でも、ニャロース部長なんてどこにいるかわからなくないですか?」
「大丈夫だ、社長がニャロース部長がサボらないよう本人には秘密で発信器が埋め込まれている。あいつは仕事で手を抜くのに有名だからな、社長直々の策だ。えーっと今は川越駅近くのデパートいるそうだ。お前達今すぐ現場に向かうんだ。」
「「は~~い」」
やる気のない返事しながら、なんでお前が行かないんだよと心の中で不満をたれる人事課戦闘員達であった。


デパート屋上にて二人のヒーローと怪人がにらみ合い緊張感が漂う。立入禁止エリア故に人気が全くなく、戦うにうってつけの場所だ。そんな雰囲気とは裏腹にニャロースは、
(あーめんどくさー、ささっと決着つけて帰るか)
すごく帰りたがっていた。当然である。自分で作り出した状況にうんざりし、感情的に動いてしまった自分が情けなくて仕方ない。しかしこのまま嘆いていても状況は変わらない。ニャロースには一撃で相手をダウンさせる方法があった。それは左手に装備されている「ゴールデンキャットハンマー」である。まずは、爪で腹に先制攻撃を仕掛けると思わせてガードが甘くなった頭をこのハンマーで一発KO、よしこの戦法でいこう。ディクテイザーには通用するかどうかわからんがリヴァイザーは馬鹿っぽいから多分この戦法でいけるだろう
「先手必勝だいくぞリヴァイザーJ」
「こい!!」
作戦通り爪でフェイント攻撃を仕掛ける、狙い通りリヴァイザーJは攻撃を防ごうと腹部ガードする。勝利を確信しゴールデンキャットハンマーを振りかぶり渾身の一撃を仕掛けようとした次の瞬間!!
「あ、いたいたニャロース部長会社に戻りますよー」
何者かが大声でニャロースのことを呼び止めた。ニャロースはそれに反応してしまい動きが止まってしまう。
「今だ!」
リヴァイザーJは反撃のチャンスを見逃さずシャークバイトでニャロースに一撃を入れる。
「うぅッ…」
予想外の攻撃に思わずひるんでしまったニャロース、自分を呼び止めた声のする方へ振り向いてみる。そこには二人の人事課戦闘員がいた。
「貴様ら何の用だ、戦いの邪魔をしやがって。」
「いやーすいませんね、平蛾博士の命令でして、社長が怒っているようなのでニャロース部長を連れてこいと」
しまった、社長から電話があったことをすっかり忘れていた。早めに折り返しの電話をしておけばこんな失態を犯さずにすんだものを。今日は失敗ばかりで自分らしくないとため息をつく。気を取り直しこのかなーりめんどくさい状況をどう解決するか考え始めた。
①    リヴァイザーJとの戦闘をさけ会社戻る
無論却下だ、リヴァイザーJ達が見逃すとは思えないし、もし仮に戦闘を避けられたとしても会社で社長に説教コースで家に帰れなくなるだろう
②    リヴァイザーJ達と戦闘中で会社に行けなかったと報告する
これも却下だ。社長の説教は避けられるが、今のニャロースは痛手を負っている。2対1となるとさすがにギリギリの戦いを強いられるだろう。
ならこの場で最も適切な答えは…
「リヴァイザーJ、ディクテイザーJちょっとこっちに来い」
ニャロースはリヴァイザーJ達を手招きし、こっちに呼び寄せる
「な…何だよ…」
「リヴァイザーJ気をつけろ、近づいたら攻撃されるかもしれない」
何もしないと両手をあげアピールすると、リヴァイザーJ達は恐る恐る近づいてくる。
「私は今日休日でなどうしても仕事をしたくないんだ、だが、今人事課戦闘員達共に撤退をすれば説教&残業コースだ。私は、どうしても避けたい」
「だ…だからなんだよ、なにがいいてんだ」
リヴァイザーJは怪訝そうな顔で質問する。
「そこでだ、私と協力して人事課戦闘員達を倒さないか?一時休戦といこうじゃないか」
「だってよ、ディクテイザーJどうするこれぜってー罠にしか思えンだけど」
「しかし、彼からは嘘をついている様子はなさそうだが、どうしたものか…」
「信用されてないようだね、ならこれでどうかな…」
そういって、財布から一万円札を抜き取り二人に見せびらかすようにした
「よし、やるぞディクテイザーJ」
「あぁ、さすがに2対3になってしまうとこちらの分が悪いからな。」
リヴァイザーJ達まさかの即決、お金に困っているとはいえもう少しヒーローとしてのプライドはないものかと思ったが、今回の場合はこの単純さに救われたのでよしとしよう
「よし交渉成立だな、では役割を決めよう私があの平岡とネームプレートに書いているやつを引き受けよう、そしたらリヴァイザーJが松尾と書いてある方を担当してくれ、ディクテイザーJ君はそのライフルで援護射撃頼む」
「「わかった!!」」
文句一つ言わず引き受けてくれた。本当に単純で助かる連中だ。
「なにやってんすかーニャロース部長早く会社にいきますよー」
平岡と松尾が呼びかけてくる。彼らには申し訳ないが今から犠牲になってもらうとしよう
「では、いくぞヒーロー共」
かけ声と共に人事課戦闘員達共襲いかかる
「え?え!なんかニャロース部長ヒーローと一緒に襲いかかってきてない?!」
慌て出す松尾それもそうだろうこんな短時間で敵同士が手を組み上司が襲いかかってきたら誰だって混乱する。
「どどどどうしよう平岡」
「お…っ落ち着け、そうだ平蛾博士が新兵器を開発したからって実験で持たされてたんだわ」
平岡は梱包された大きな箱を取り出しおもむろに開封し始めた。開封されてたモノを見てみるとどこかで見たことあるような刃が真っ黒な剣だった。
「じゃーん、これ鬼を滅する刃みたいでなんとかの呼吸が使えるようになって身体能力が上がるらしいぜ」
「何それちょー強そうじゃん」
なんか色々とアウトな品物が出てきたがめんどくさいからつっこまないでおこうと思う
まぁ、あの剣を持ったところでたかが人事課戦闘員たいしたことはないだろう。このまま作戦通り松尾を仕留めようとハンマーで一撃を試みる、だが剣を持った平岡が松尾をかばうように立ち塞がった。
「馬鹿めこのまま二人とも…」
だが攻撃は届かず剣で防がれはじかれてしまう。
「馬鹿な…」
ニャロースは驚愕した。剣を持ったたかだか人事課戦闘員達に自分の攻撃を無力化されてしまったのだ。侮っていたまさか平蛾博士の新兵器がこれまでのもとは
「ありがとうーーー平岡おかげで助かったーーー」
「へっ、いいってことよ俺たち仲間だろ。それにしてもこの剣持っただけで体が勝手に動いて戦いやすいはー今なら必殺技とか出せそうだな。あ、そうだこれ松尾の分」
「よーし、これで俺も」
「そういえば新兵器の名前とか聞いてないや」
「決めちゃっていいんじゃない?」
「うーんそうだな、刃が太陽のように輝いているから…日○刀ってゆうのはどうだ!」
「おーかっこいいじゃん!」
頼むから黙っていて欲しい、そう切に願うニャロース
「おいニャロースこいつらいつもと違うんじゃねーか」
「ああ、そのようだなまずは、こいつらの実力がどれだけあるか様子見だ」
「オッケー」
「私は引き続き援護射撃でサポートしよう」
「よろしく頼むよディクテイザーJ」
さて、相手の力が未知数だまずは相手の攻撃パターンを見分ける為相手から仕掛けて貰うとしよう。そう思い人差し指クイクイッとまげ挑発のポーズをとった。
「行くぞーーー」
声を上げながら人事課戦闘員松尾が勢いよくニャロースを斬りかかる、だがニャロースはヒラリと受け流す。スピードとパワーが上がっているようだが型がでたらめであるためには刃全く当たらない。果敢に松尾は攻めてくるが余裕で避け続けるなんだ思ったよりはたいしたことがないなと思った瞬間!恐ろしく早い斬撃が襲いかかる。とっさに左手のハンマーでガードしたがその一撃はとてもおもく、ハンマーに切り傷を残すほどの攻撃だった。
「ほらほらニャロース部長どんどん攻めちゃいますよー」
調子に乗った松尾が攻撃の手を緩めずどんどん斬りかかる。ニャロースは隙を斬撃を受け止め反撃のキャットクローを何発が入れるが相手は怯む様子もなくゾンビのように立ち上がり幾度となく攻め続ける。
「もらったーーー」
松尾が剣を大きく振りかぶりニャロースの首に斬りかかる。だがディクテイザーJの援護射撃が剣をはじき、松尾に大きな隙が生まれた
「ラッシュハンマー!!」
ニャロースの左手から繰り出される必殺の高速連続パンチがみごとボディーにきれいに入った。さすがにもう立ち上がれないだろうと勝ちを確信した途端…人事課戦闘員松尾は苦しみながらも立ち上がっていたのだ
「今の攻撃俺は派遣社員だから我慢できたけどバイトだったら我慢できなかった。今ここで会社に連れ帰るんだ例え相打ちになっても!!」
なんだこいつ今までの人事課戦闘員になかった「すごみ」がある、あの新兵器の力はそれほどの力を持っているのか
「派遣の呼吸壱の型 鬱憤晴らし」
人事課戦闘員松尾は日○刀を突き出し喉元めがけ突き刺すように攻撃を仕掛ける。だがニャロースは爪ではじき返し大きく姿勢を崩させた。
「派遣の呼吸弐の型 上下逆転」
転びそうな知勢から一転松尾は上半身を上に反転させそのまま刀を下から上に勢いよく振りかざす。その攻撃を読んでいた。
「ふんっつ」
首を素早く曲げ、首と肩の間で剣をしっかりとうけとめホールドする
「ぬ、抜けない」
人事課戦闘員松尾、剣を抜こうと奮闘するもびくともしない
「ふんやはりそうか、その新兵器恐ろしく強いが首にしか攻撃出来ないようになっているな?」
「ええーーそうだったの?!」
「いや、戦っている時に気づけよ、ディクテイザーJ!」
「あぁ、わかっている」
ディクテイザーJのライフルが身動きがとれない人事課戦闘員松尾に標準を合わせ最大出力でトリガーを引き撃ちはなつ
「ぎゃあぁぁぁぁ」
断末魔をあげ松尾はそのまま地面に倒れ込んだ。立ち上がる要素はないがなんとかの呼吸で耐久力が上がっているから死んではないだろう。
「さて…あっちはどうなったかな、おい、リヴァイザーJ!」
「うるせー戦闘だ」
「はぁ、まだ勝負がついてついてないのかまだまだ未熟だな。」
「お前だってさっき戦闘終わったばっかじゃねーか」
とはいえ、認めたくないが以外と強敵、苦戦するのはまぁ仕方ないといってやろう。早く終わらせたいニャロースはリヴァイザーJにしょうがなくアドバイスを与えることにした
「苦戦しているお前に一ついいことを教えてやろう」
「なんだ、上から目線で」
シャークバイトで剣を受け止めながら切れ気味で応えるリヴァイザーJ。やだやだ最近の若者はすーぐキレるから嫌いだ。
「人事課戦闘員は戦闘力こそ上がってはいるが狙ってくる場所は一カ所に集中されている、それはどこだか分かるかナ?」
「はっ、まさか」
ようやく気付いたか、全く私がヒントを出さなければどれだけ長引いていたか予想もつかん
「でもよ、いくら隙があるとはいえこの猛攻にいつまで耐えられるか…」
「やれやれ」
瞬時に飛び上がり人事課戦闘員平岡に強烈ドロップキックをかます。
「どはっ」
思わぬ奇襲にたまらずノックバックしてしまう平岡だが瞬時に体勢を立て直し距離をとる
だが、これでいい
「おい、リヴァイザーJ」
「なんだよ…おおちょい何すんだよ」
リヴァイザーJの頭をわしづかみにし顎をあげ人事課戦闘員平岡に首を差し出すような形をとった
「人事課戦闘員平岡よ私たちの負けだもう疲れたしかなりのいたでを負っていてねこれ以上戦いたくない。私も大人しく会社に戻るとしよう。君たちを裏切った詫びとわなんだがこのリヴァイザーJの首を切った暁には君たちを資産管理部で面倒をみてやろう更に強力な怪人にし、給料も倍にする。どうだこれで私を許してもらえないだろうか?」
「おい!やっぱてめえ」
「ニャロースやはり貴様」
「いいから、黙ってろ」
二人を制止させ、平岡の答えを待つさあどう答える
「何いってんすかニャロース部長そんなの…許すに決まってるじゃないですか!!」
「そうか、ありがとうならこいつの首を一刻も速く切り落としてくれ」
「了解しました-それじゃ、派遣の呼吸 奥義正社員昇進」
ダッシュでリヴァイザーJの首を切りにかかってくる。どんどんと距離を詰めていく平岡に焦るリヴァイザーJだがこれもニャロースの作戦であった。
「リヴァイザーJ屈め!」
切られる寸前で頭を放し、指示を出す。リヴァイザーJはとっさに反応し素早く屈んだため
平岡の振り切った刃は空を斬り当たることはなかった。リヴァイザーJは好機を見逃さす平岡の懐に潜り込み必殺の一撃を放った
「シャープバイト!!」
「まだまだこれこれかr…」
平岡は立ち上がろうとしたがディクテイザーJのライフルが決めてとなり力尽きた

「やったんなディクテイザーJ」
「ああ、俺たちの勝利だ」
ヒーロー達は勝利を共にかみしめて分かち合い喜び合っている。全くヒーローっぽいことをしやがってさっきまで1万円でつられた連中とは思えんな。
「さて…」
ニャロースにはやるべきことがあった、そう口裏を合わせだこのままあったことを人事課戦闘員が報告したら説教どころか首にされ組織に追われる身になるだろう。
地面に倒れた人事課戦闘員達に歩み寄り人事課戦闘員達を無理矢理起き上がらせてこういった
「今から私の言うことを復唱し一言一句間違えずに平蛾博士に報告するんだ。ちゃんと復唱出来たら褒美をやろう、もし私の言ったこと違うことを話せば…分かるよな?」
「「はい」」
「ニャロース部長はヒーロー戦闘中で電話に出られなかったそうです。はい復唱」
「「ニャロース部長はヒーロー戦闘中で電話に出られなかったそうです。」」
「よし次だ、私たちも加戦しましたがヒーローに手も足も出ず戦闘不能にされたのでニャロース部長を連れてくることが出来ませんでした。今も戦闘している用ですはい復唱」
「「私たちも加戦しましたがヒーローに手も足も出ず戦闘不能にされたのでニャロース部長を連れてくることが出来ませんでした。今も戦闘している用です」」
「よくできました、約束通り褒美を置いておこう」
千円札を一枚そっと置いた。
「あ、俺たち手伝ったんだから報酬よこせよ」
「そうだぞ、ニャロース約束は守って貰うぞ」
「全く悪の組織に報酬を貰うヒーローなんて前代未聞だぞ。まぁこれは自分で提示した条件だし大人しく払ってやるか。」
ニャロースは財布から紙幣を取り出しヒーローの元に放り投げる。
慌てて紙幣を拾うヒーロー達こんな光景小さいお子さん達には絶対に見せられないだろう
「じゃあな」
一言だけ放ちヒーロー達に背中を向け退散した。
「ふん、最後まで偉そうなやつだったな。それよりディクテイザーJ今日焼き肉行こうぜなにしろ一万円もらったんだからぱーっといこうz…」
「どうした?」
「これ千円札じゃねえかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
リヴァイザーJの響き渡る悲しみの絶叫を聞きながらニャロースは鼻で笑った。


午後7時ニャロース宅にて
ニャンビーは暇を持て余していた。兄にアフタヌーンティーに誘われ来てみればマタタビがきれたとかで買い物にでかけてくると書かれた置き手紙しかなかったのだ。暇だったので兄の部屋を詮索するも面白そうなものは特になかったし、ゲーム機はない状態で、かれこれ4時間以上兄の帰りを待っている。
「暇すぎー」
不満をこぼしながらもテーブルにあったスコーンをむさぼりながらしばらく帰ってこない兄の帰りを従順に待つニャンビーであった。

 

bottom of page