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夢か現実か

(作:平岡慶大)

平岡Ⅱ.jpg

とある日の夕方、人通りの少ない路地で奇妙な格好をした連中が戦っていた。
「よーし、これで決めるぜ!」
掛け声とともにリヴァイザーJの強力な一撃が人事課戦闘員達を襲った。
「う、うわぁぁぁ!!」
「だ、駄目だ・・・、敵いっこねぇ・・・」
「ええいお前たち!いったい何をしているのだ!この役立たずどもめ!」
総務部部長であり科学者の平蛾螈蔑が声を荒げる。
「そ、そんなこと言ったってアイツめちゃくちゃ強いんですもん!」
「やっぱり若い分勢いがありますからね~」
「俺たち下っ端が三人居ても勝てるわけないじゃないですか。せめてほかの部署から要請でもしてもらわないと」
人事課戦闘員の平岡、高山、高瀬がそれぞれ文句を平蛾にぶつける。
「馬鹿者!ほかの部署なんかに借りなんか作ってたまるか!私が手柄を立てることに意味があるのだ!」
自らの出世だけを望むプライドの高い平蛾にとってほかの部署に助けを求めることは屈辱でしかなかった。そんなんだからいつまでたってもリヴァイザーJを倒せないじゃないかと平岡は言おうとしたが言ったら言ったで怒られることは明らかだったので心の中に留めておくことにした。
「おーい、喧嘩してるとこ悪いんだけどさ・・・、俺そろそろバイトの面接があるんだよね。お前らに割いてる時間なんてないの。戦うなら戦うで早くしてほしいんだけど」
内輪揉めしている間に痺れを切らしたリヴァイザーJがイライラした様子で声をかける。
「どうするんだ?このまま退くってんなら見逃してやるぞ。でも戦うってんなら俺にも生活がかかってるんだ。容赦はしねーぞ」
「ぐぬぬ・・・、このまま戦い続けてもこちらの被害が大きくなる一方か・・・。仕方ない、お前たち、ここは退くぞ」
「あ、もう定時っすね。このまま帰ってもいいっすか?」
「いいわけないだろこの馬鹿者共が!!帰ったら私の実験に付き合ってもらうぞ。もちろん残業代は無しだ」
「えぇ~!そりゃないっすよ~」
そう言いながらと逃げ出すように帰る平蛾たち。リヴァイザーJは平蛾たちが見えなくなったことを確認するとやれやれといった様子でバイトの面接に向かった。
 時刻は深夜0時を回った。ようやく平蛾の実験から解放された戦闘員たち。その足取りはまるでゾンビのように重かった。
「や、やっと終わった・・・」
「あの虫野郎・・・、こんな時間まで残させやがって人を何だと思ってるんだ・・・」
「あの人、一度実験を始めると時間の概念忘れちゃうからな。おかげで終電逃したぞ」
「しかも任務に失敗したことでほかの部署からもめちゃくちゃ怒られたな」
彼らの勤めている総合商社セルはブラックの極みのような会社であるため定時に帰れないことは当たり前。それ故、もはやこんな時間に退社するのも慣れた3人はいつも決まって平蛾や会社に対して文句を言いながら帰るのが日常となっていた。
「だいたいあのおっさん素直にほかの部署に手伝ってもらえばいいのに出世がとか威厳がとか言ってるからリヴァイザーJに勝てないんだよ」
平岡は夕方の戦いで思ったことを高山と高瀬にぶつけた。
「ホントそれな。ああいう奴はいずれ身を滅ぼしちまえばいいのに」
高山が同意するように頷く。
「しかもあの人、甥っ子には甘々なんだよな。その優しさを少しでも分けてほしいよ」
「ああ、確か最近コネで入社した槍ヶ岳毒長だっけ?あいつもむかつくよな」
甥っ子の話を聞いた高瀬が不満の矛先を槍ヶ岳に向けた。
「俺らより後から入ったくせに平蛾の甥ってだけで課長補佐にまでなりやがって・・・見た目もなんか気持ち悪いしよ」
「・・・俺らも人のこと言えないけどな」
そんな上司の不満を言ってくうちに話題は会社の話になっていた。
「つーかこの会社ってこんなにブラックなのによく続いてるよな」
「まあやっていることは一応世界征服だけど表向きは一般企業でしかもそれなりに実績のある企業だからな。しかも組織に刃向かう輩は始末するか洗脳するかだから悪事が表にばれることはない。恐ろしい会社だよ」
「ああ!だから俺ら毎回リヴァイザーJを倒しに行ってるのか!」
高瀬が納得したように頷いた。
「お前気づいてなかったのかよ・・・」
平岡が呆れたような目で高瀬を見る。
「まあリヴァイザーJが警察に駆け込んで俺らの悪事をいったところで信じてもらえないだろうからほっといていいと俺は思うがな」
「それでも危険分子であることは変わりないんだから早く始末したいというのが上の考えだろう。今は大丈夫だけど俺らもこれ以上任務に失敗したらホントに始末されかねないぞ」
高山の発言に平岡と高瀬は背筋がゾッとなった。
「はぁ・・・。こんなことならもっとちゃんとした企業に入りたかったよ・・・」
セルに入ったことを後悔しながら大きなため息をつく平岡。
「仕方ないよ。このご時世、俺らみたいなのを雇ってくれるのはこんな会社ぐらいさ」
「あーあ、出世してーなぁ・・・」
そんなこんな話しているうちにようやく会社から出れた3人。この会社は無駄に広くて困ると思いつつ、駐車場へと向かい各々が挨拶を交わし、車に乗って帰宅した。
車に乗って30分ほど掛けて帰宅した平岡。時刻はもうすぐ1時を回る。明日・・・というか今日も早いので軽くシャワーを済ませ買い溜めしておいたカップラーメンを食べ、すぐ床に就いた。
「なんだろう・・・、今日はやけに体がだるいな」
疲れているのは当然だが今までとは比にならないほど体が重く感じた。リヴァイザーJの攻撃をもろに受けたせいか?いや、自慢じゃないが生まれつき体は丈夫なほうだ。それに改造されたせいで回復力も上がっている。それじゃあ平蛾の実験で怪しい薬を飲んだからか?いや、薬はほぼ毎日飲まされていたがここまで酷くはならなかった。ああでもないこうでもないといろいろ考えているうちに寝れば治るだろうという結論にたどり着いた平岡はそっと目を閉じた・・・。
「ん・・・、ここは・・・」
目が覚めるとそこは見知らぬ路地裏。
「え・・・、ここどこ?なんで俺こんなとこにいるの?」
確か自分は家に帰って寝たはず・・・それなのになぜこんなところにいるのかと困惑する平岡。
「なんで寝てたはずの俺がこんなところにいるんだ?もしかしてあまりに疲れていたせいで夢遊病を起こしたとか?それか誰かが寝ている間に俺を運んだか・・・、いやそれは流石にないか」
いろいろ原因を考えた平岡だったが特に思いつかなかったのでとりあえず辺りを探索することにした。
「まずは今自分がどこにいるかを確かめないとな。スマホがないからマップで居場所は確認できないからとりあえず誰か人を探して聞くとしよう。ただ周りはまだ暗いから多分深夜だよな?出歩いている人なんているかなぁ・・・」
インターホンを押して家の中にいる人に聞くという手も考えたが残念ながら深夜。そんな時間帯にインターホンなんて押したら怒られるのは目に見えている。悪の怪人ではあるが元はただの人間、最低限のマナーは携えている。それは最終手段だ。
「ん?あれは・・・」
しばらく歩いていると二つの人影がこちらのほうに近づいてくる。
「よ、よかったぁ・・・。ようやく人が見つかった。あの人たちにここがどこなのか聞ければ帰れるぞ。でもこんな時間に出歩いているぐらいだし怖い人だったらどうしよう・・・。あ、ていうか普通の人から見たら怪人の俺のほうがよっぽど怖いか。怖がらせないようにフレンドリーに聞こう。おーい、すみませーん」
人影のほうに手を振りながら近づいていく平岡。二つの人影は近づくにつれ段々と姿がはっきりしていく。
「すいませーん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど。あ、私見た目はこんなんですが中身はピュアなおじさんなので怖がらないで・・・って、ニャロース部長にニャンヴィー課長!?」
二つの人影の正体はセルの資産管理部の部長、ニャロースとその弟であるニャンヴィー。意外な人物の登場に驚きを隠せない平岡。
「ど、どうしてお二人がこんな時間のこんなところに!?あ、でもちょうどよかった・・・。実は私、少し道に迷ってしまいまして・・・。もしよろしければここがどこなのか教えていただければなぁなんて・・・」
突然のことで驚きはしたが、もしここで出会ったのが一般人で自分の姿を見て悲鳴を上げられ騒ぎになるという心配はしなくて済んだのでとりあえず安心した平岡は、二人の上司に道を尋ねることにした。
「ここがどこだって・・・?そんなことはどうだっていい・・・、なあニャンヴィー?」
「そうだね兄さん。だって君は今から僕たちに始末されるんだから・・・」
「え・・・、それってどういう・・・」
平岡が二人の言葉の意味が理解できずにポカンとしていると突如、ニャロースとニャンヴィーの鋭い爪が平岡目掛けて襲い掛かってきた。
「う、うわぁぁぁ!!」
「あれ?躱されちゃった」
「次は確実に仕留めるぞ。ニャンヴィー」
何とか紙一重で躱すことに成功した平岡。しかし、ニャロースとニャンヴィーは再び襲い掛かろうと戦闘態勢を整える。
「ちょ、ちょっと!なんでいきなりこんなことするんですか!?私お二人に対して何か失礼なことしましたか?」
攻撃してくる原因を突き止めようとする平岡。しかし、二人は平岡の質問には答えようとせず、平岡ににじり寄ってくる。
(ま、まずい・・・。あの二人、本気で俺を殺そうとする気だ。な、何とかして逃げないと・・・)
このままでは自分の身が危険だと感じた平岡は何とか隙を見つけて逃げ出そうと考えたが相手は二人、しかも自分なんかよりもよっぽど強い怪人。まともに逃げ出すのは至難の業だった。
(くそっ!一体どうすれば逃げられるんだ・・・。そうだ!こうなったらイチかバチかやってみるしかない!)
何か作戦を閃いた平岡。平岡は二人の後ろにある建物の屋根のほうを指差し、大きな声で叫んだ。
「あ、リヴァイザーJだ!よかった助けに来てくれたんだ!」
「何!?リヴァイザーJだと!?」
平岡の言葉を聞き、平岡が指差したほうを思わず向きだす二人。しかし、そこにはリヴァイザーJの姿はなかった。
「誰もいないではないか。さてはあまりの恐怖に幻覚でも見たか」
「あっ、兄さん見て!あいつがいなくなってる!」
先に平岡のほうに視線を戻したニャンヴィーは平岡がいなくなっていることに気づき声を荒げた。
「くそ!アイツ最初から僕たちを騙すつもりであんな嘘をついたのか!」
「まあいいさ。どうせそう遠くには逃げてないのだ。すぐに見つかるだろう」
「それもそうだね。行こうか兄さん」
暗闇に消えるかのようにその場を立ち去るニャロースとニャンヴィー。そして誰もいなくなった路地裏。しばらくするとニャロースたちがいた場所から近くにあったゴミ箱がガタガタと揺れだした。
「ふぅー、そろそろ出てもいいだろう。あいつらもまさかこんなところに隠れているとは思わないだろ」
ゴミ箱から出てきたのは平岡。ニャロースたちを騙し、走り去ったかのように思われたのだが実は近くにあったゴミ箱に潜んでいたのだ。
「それにしてもあいつら、まさかあんな古典的な方法に騙されるとはな。意外と頭悪いのか?まああんな方法しか思いつかなかった俺もあまり人のことは言えないけど・・・。でもあの二人、もっと賢そうなイメージがあったんだけどなぁ・・・。あんなのが上司だったなんて」
二人の知能の低さに複雑な気持ちになったがとりあえず現在の状況を整理することにした。
「えっと、目が覚めたら知らない場所にいて、しばらく歩いていたらニャロース部長とニャンヴィー課長に会ったと思ったらいきなり攻撃してきて・・・、駄目だ、全然状況が理解できん。いや待てよ、そういえば・・・」
状況を整理したものの全く原因がわからなかった平岡であったがふと、仕事帰りのことを思い出した。
「そういえば高山の奴、これ以上任務に失敗するとホントに始末されるみたいなことを言ってたよな・・・。そ、それじゃあまさかあの二人、俺があまりにも仕事の結果を出さなかったから使えないと判断して始末しに来たってことか!?だ、だとしたらやべぇよ・・・。もう会社に俺の居場所がないってことだろ!?それどころかこれから先、ずっとあいつらから逃げないと命はないじゃないか!」
高山の言葉を思い出し自分の置かれている状況をようやく理解した平岡。その顔はみるみるうちに青くなっていき、改造が施されていた顔というのもありかなり恐ろしい表情となっていた。
「と、とにかくできるだけ遠くに逃げないと。まずは何とかして家に帰ろう。財布やスマホ、必要なものをすべて持っていかなくちゃ。あとなりふり構ってられないからインターホン鳴らして誰かに道を聞こう。怒られるだろうけど命にかかわることなんだしきっとわかってくれる・・・」
「残念だがもうその必要はないよ平岡君」
「よくも僕たちをコケにしてくれたね」
とりあえず今後の方針を決め行動しようとする平岡であったが、その直後、聞き覚えのある声が聞こえた。
「そ、その声はニャロース部長、それにニャンヴィー課長・・・。も、もう見つかってしまうなんて」
「念のため戻ってみて正解だったな。まさか我々がいた場所からほとんど移動していなかったとは」
「君、ちょっと生ゴミ臭いよ?もしかしてゴミ箱に入って隠れてたの?ククク、お似合いだね」
声の正体はニャロースとニャンヴィー。まさかここに戻ってくるとは思っておらず動揺する平岡。
「そ、そんな・・・。まさか戻ってくるなんて」
「お前如きが我々から逃げられると思うなよ。今度こそ確実に始末してやる」
「その様子だと自分がなぜ襲われているか理解できたようだね。全く、平賀も無能ならその部下も無能で困っちゃうよ」
(だ、駄目だ・・・。もうさっきのような方法じゃ逃げられない。もはやこれまでか・・・)
いくらあの二人でもさすがに二度も同じ手は通じない。もう打つ手のない平岡は逃げることを諦め、死を覚悟した。
(ちくしょう・・・、こんなことになるならもっとちゃんと勉強していい大学行ってちゃんとした職に就きたかったな。あれ?あそこにいるのって・・・)
自分の過去を振り返り後悔する平岡であったが、ふと上を見ると建物の屋根に何やら人影が見えた。
(なんだ・・・俺たち以外にも人がいるのか?それにしても暗くてよく見えないな。でもどこかで見たことあるような)
ニャロースたちの後ろにいるその人影は段々と月の光に照らされ姿がはっきりしていく。
「もしかして、リヴァイザーJ?」
平岡の発言に鼻で笑うニャロースたち。
「ふん、またハッタリか?」
「今度は騙されないよ」
先ほどのこともあって二人は全く信じていないが平岡の目にははっきりとリヴァイザーJの姿が見えている。
「さあこれで使えない道具ともおさらばだ」
ニャロースたちがとどめを刺そうと戦闘態勢をとったその時、屋根にいたリヴァイザーJが飛び降り、自慢の武器、シャープバイトでニャロースに斬りかかった。
「くらえ!この猫野郎!」
「ぐわぁぁぁ!!」
「に、兄さん!?」
背後からの攻撃をモロに受け、倒れたニャロース。突然のことに驚きポカンとする平岡とニャンヴィー。かっこよく登場することができて満足げに腕を組むリヴァイザーJ。傍から見たら奇怪な状況である。するとはっと我に返ったニャンヴィーがようやく状況を理解し、倒れたニャロースのもとへと向かった。
「に、兄さん!大丈夫かい!?」
「お、おのれリヴァイザーJ・・・。まさか本当にいたとは・・・」
「へっ、夜道は危ないから背中に気を付けることだなニャロース!おい、大丈夫か平岡?」
「リ、リヴァイザーJ・・・。まさか俺を助けに来てくれたのか?」
リヴァイザーJが今まで敵だった自分を助けてくれた。信じられなかった平岡はリヴァイザーJに問いただした。しかしリヴァイザーJの回答は意外なものだった。
「いやそんなわけねーだろ」
まさかの否定である。なんとなくそんな気はしたがこう堂々と言われるとなんだかショックな気持ちになった平岡。そんな平岡に対してリヴァイザーJが続けて話す。
「いいか平岡。実を言うとここはなお前の夢の中なんだ。だから気がついたら知らないところにいるし、ニャロースたちの頭もちょっと悪い、俺が都合よくここにいるのも全部夢の中だからだ。ちなみにこの夢から覚めるにはあの猫兄弟を倒さないといけないぜ」
「ええ!夢の中だって!?ま、まあ確かにそうでもなきゃ寝てたはずの俺がここにいるのも変だしこんな都合のいい展開になったりしないよな・・・。じゃ、じゃあさリヴァイザーJ!あいつらさっさと倒してくれよ!そうすれば夢から覚めるんだろ?」
「やだよめんどくさい。大体俺この後バイトの面接があるんだよ。お前らなんかにかまってる暇ねーんだよ」
平岡の協力の申し出にバイトの面接があるという理由で断るリヴァイザーJ。
「何で断るんだよ!お前正義のヒーローだろ!大体お前、夕方もバイトの面接があるとか言ってたじゃないか!何回面接すれば気が済むんだよ!」
「いいだろお前俺が夢の中でバイトの面接してたって!それだけこっちは金に困ってんだから。じゃあな!」
「え、ちょっと待ってホントに行っちゃうの?無理だよ俺があの二人に勝つなんて!」
唯一の希望であるリヴァイザーJが去ろうとしていよいよ焦りだす平岡。そんな平岡に対してリヴァイザーJが去り際にあることを言った。
「ちなみにここはお前の夢の中だからある程度はお前にとって都合のいい展開になっているはずだ。いろいろ試してみるんだな」
そう言い残し夢の中でも自由なリヴァイザーJは姿を消した。
「都合のいい展開ってどういうことだよ・・・」
ポツンと立ち尽くしリヴァイザーJが消えるのを確認した平岡はリヴァイザーJが最後に残した言葉の意味を考えた。しかしその考えはある者の声によって邪魔された。
「おいお前!我々を無視するとはいい度胸だな」
いつの間にか倒れていたニャロースが起き上がっており怒りの形相でこちらをにらんでいた。
(そういえば俺とリヴァイザーJが喋っている間、全然攻撃してこなかったな)
空気を読んでくれたのか全く攻撃してこなかったニャロースたち。
(そういえば最初攻撃された時も自分でもよく躱せたなって思ったな。もしかして俺、夢の中だと強くなってるのか?)
リヴァイザーJの都合のいい展開という言葉を信じるなら自分でも勝てるかもしれないと考え出した平岡。なんだかいけそうな気がした平岡は戦闘態勢に入った。
「ほう、我々と戦おうというのか」
「リヴァイザーJがいないのに僕たちに勝てるかな?」
ニャロースたちも戦闘態勢に入りお互い睨め会う。
「いくぞ!」
先に動いたのはニャロースたち。左右から平岡目掛けて鋭い爪が襲い掛かかった。しかし平岡は冷静だった。
「なんだ意外とゆっくり見えるぞ!これなら避けられる」
二人の攻撃を簡単に躱した平岡はまずニャンヴィー目掛けて思いっきりパンチをした。
「くらえ!」
「ぐはぁ!」
ニャンヴィーの腹に入ったパンチは平岡の想像以上の威力でパンチをくらったニャンヴィーは遠くまで吹っ飛ばされた。
「ニャンヴィー!!」
「マ、マジかよ・・・。流石に都合よすぎやしないか?でもまあこんな機会滅多にないからな。日頃の恨みを晴らすつもりでガツンとやってやるぜ」
ニャンヴィーを下っ端の自分が倒したことで自信が湧いてきた平岡は続けてニャロースにキックをくらわした。
「ぐわぁぁぁ!ば、馬鹿な・・・。まさか我々がこんな奴に負けるなんて」
あっけなく倒れたニャロース。二人ともまさかの一撃KOである。
「あーすっきりした。あの二人をこんな圧倒的な力で倒せるなんて。こんないい気分になれたのはいつぶりだろうか。なんだかすっきりしたら眠たくなってきたなぁ。あ、こんなところにベッドがある。ちょうどいいから使わせてもらおう」
どこからともなく表れたベッドで寝る平岡。その表情はどこか満足げであった。
ピピピピピ、ピピピピピ
「ん・・・。もう朝か」
いつものように目覚ましの音で起きた平岡。
「いい夢を見たなぁ。毎日これぐらい気持ちのいい朝を迎えられればいいのに」
そう言いながら支度をする平岡であったがふと高山の任務に失敗したら始末されるという言葉を思い出した。
「もしかしてあの言葉を聞いたせいで襲われる夢を見ちゃったのかな?正夢にならないように頑張らないとな」
そう言って平岡は会社に出社した。近い未来、本当に始末され新たに改造されるのはまた別のお話。

 

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